難経

 

十六難


◆十六難曰.
脉有三部九候.有陰陽.有輕重.有六十首.一脉變爲四時.離聖久遠.各自是其法.何以別之.
然.
是其病.有内外證.其病爲之奈何.
然.
假令得肝脉.
其外證.善潔.面青善怒.
其内證.齊左有動氣.按之牢若痛.
其病四肢滿.閉癃溲便難.轉筋.
有是者肝也.無是者非也.

假令得心脉.
其外證.面赤.口乾.喜笑.
其内證.齊上有動氣.按之牢若痛.
其病煩心.心痛.掌中熱而啘.
有是者心也.無是者非也.

假令得脾脉.
其外證.面黄.善噫.善思.善味.
其内證.當齊有動氣.按之牢若痛.
其病腹脹滿.食不消.體重節痛.怠墮嗜臥.四肢不收.
有是者脾也.無是者非也.

假令得肺脉.
其外證.面白善嚔.悲愁不樂.欲哭.
其内證.齊右有動氣.按之牢若痛.
其病喘欬.洒淅寒熱.
有是者肺也.無是者非也.

假令得腎脉.
其外證.面黒.喜恐.欠.
其内證.齊下有動氣.按之牢若痛.
其病逆氣.少腹急痛.泄如下重.足脛寒而逆.
有是者腎也.無是非者也.

十六難に曰く.
脈に三部九候あり、陰陽あり、軽重あり、六十首あり.
一脈は変じて四時となすというが.聖を離れること久遠にして各自その法を是とするなら、何以って之を別つや?
然り.
是れその病に内外の証あるなり.其の病は之を為すこと奈何に?
然り.
仮令(たとえば)、肝の脈を得れば、
其の外証は、潔を善み(このみ)、面は青く、善く(よく)怒る.
其の内証は、臍の左に動気ありて、之を按ずれば牢き(かたき)か若しくは痛む.
其の病は、四肢満し、癃閉し、溲便は難く(かたく)、転筋す.
是れある者は肝なり.是れ無き者は非ざるなり.

仮令(たとえば)、心の脈を得れば、
其の外証は、面は赤く、口が渇き、喜び笑い、
其の内証は、齊上に動気ありて之を按ずれば牢きか若しくは痛む.
其の病は、煩心して、掌の中が熱して啘(※からえずき)す.
是れある者は心なり.是れ無き者は非ざるなり.

仮令(たとえば)、脾脈を得れば
其の外証は、面は黄色、善く噫(おくび ゲップ)し、善く思し、善く味す.
其の内証は、臍に当たりて動気ありて之を按ずれば、牢きか若しくは痛む.
其の病は、腹は脹満し、食は消せず、体重節痛し、怠惰して臥するを嗜み(このみ)、四肢は収まらず.
是れある者は脾なり.是れ無き者は非ざるなり.

仮令(たとえば)、肺脈を得れば
其の外証は、面は白く、善く嚔し(ていし、くしゃみし)、悲愁して楽しまず、哭く(なく)ことを欲す.
其の内証は、臍の右に動気ありて之を按ずれば牢きか若しくは痛む.
其の病は、喘咳し、洒淅し(灑淅 悪寒してブルブル震える)、寒熱す.
是れある者は肺なり.是れ無き者は非ざるなり.

仮令(たとえば)、腎脈を得れば
其の外証は、面は黒く、善く恐れ、欠す(あくびする).
其の内証は、臍の下に動気ありて之を按ずれば牢きか若しくは痛む.
其の病は、逆気し、小腹が急痛し、泄して如に(さらに)下重し、足脛は冷えて逆す.
是れある者は腎なり.是れ無き者は非ざるなり.

※啘:からえずき...乾嘔(吐きけがあって吐こうとするが出ない)