難経

 

五十六難


◆五十六難曰.
五藏之積.各有名乎.以何月何日得之.
然.
肝之積.名曰肥氣.在左脇下.如覆杯.有頭足.久不愈.令人發欬逆(疒+皆)瘧.連歳不已.
以季夏戊己日得之.
何以言之.
肺病傳於肝.肝當傳脾.脾季夏適王.王者不受邪.肝復欲還肺.肺不肯受.故留結爲積.
故知肥氣以季夏戊己日得之.

心之積.名曰伏梁.起齊上.大如臂.上至心下.久不愈.令人病煩心.
以秋庚辛日得之.
何以言之.
腎病傳心.心當傳肺.肺以秋適王.王者不受邪.心復欲還腎.腎不肯受.故留結爲積.
故知伏梁以秋庚辛日得之.

脾之積.名曰痞氣.在胃脘.覆大如盤.久不愈.令人四肢不收.發黄疸.飮食不爲肌膚.
以冬壬癸日得之.
何以言之.
肝病傳脾.脾當傳腎.腎以冬適王.王者不受邪.脾復欲還肝.肝不肯受.故留結爲積.
故知痞氣以冬壬癸日得之.

肺之積.名曰息賁.在右脇下.覆大如杯.久不已.令人洒淅寒熱.喘欬.發肺壅.以春甲乙日得之.
何以言之.
心病傳肺.肺當傳肝.肝以春適王.王者不受邪.肺復欲還心.心不肯受.故留結爲積.
故知息賁以春甲乙日得之.

腎之積.名曰賁豚.發於少腹.上至心下.若豚状.或上或下無時.久不已.令人喘逆.骨痿少氣.以夏丙丁日得之.
何以言之.
脾病傳腎.腎當傳心.心以夏適王.王者不受邪.腎復欲還脾.脾不肯受.故留結爲積.
故知賁豚以夏丙丁日得之.

此是五積之要法也.

五十六難に曰く.
五臓の積に各々名有りや、何れの月の何れの日を以て之を得るや?
然り.
肝の積、名づけて肥気(ひき)と曰う.左の脇下に在りて、杯を覆せるが如く、頭足ありて、久しく癒えず.人をして咳を発し、逆し、(疒+皆)瘧せしめ、歳を連ねても已えず.
季夏の戊己の日を以て之を得るなり.
何を以てか之を言えば、
肺が病みて肝に伝え、肝は当に脾に伝うべきも、脾は季夏に適に王し、王する者は邪を受けず.肝は復た肺に還さんと欲すれども、肺は受けること肯(がえん)ぜず.故に留結して積と為るなり.
故に肥気は季夏の戊己(ぼき)の日を以て之を得ることを知るべし.

心の積、名づけて伏梁(ぶくりょう)と曰う.臍上に起り、大きさは臂(ひ)の如く、上は心下に至り、久しく癒えず.人をして煩心を病ましむ.
秋の庚辛の日に之を得るなり.
何を以てか之を言えば、
腎が病みて心に伝え、心は当に肺に伝うベきも、肺は秋に適に王し、王する者は邪を受けず.心は復た腎に還さんと欲すれども、腎は受くること肯ぜず.故に留結して積と為るなり.
故に伏梁は秋の庚辛(こうしん)の日を以て之を得ることを知るなり.

脾の積、名づけて痞気(ひき)と曰う.胃脘に在りて、覆いて大きさは盤の如く、久しく癒えず.人の四肢をして収めざらしめ、黄疸を発し、飲食すれど肌膚と為らず.
冬の壬癸の日を以て之を得るなり.
何を以てか之を言えば、
肝が病みて脾に伝え、脾は当に腎に伝うべきも、腎は冬を以て適に王し、王する者は邪を受けず.脾は復た肝に、還さんと欲すれども、肝は受けること肯ぜず.故に留結して積と為るなり.
故に痞気は冬の壬癸(じんき)の日を以て之を得ることを知るなり.

肺の積、名づけて息賁(そくほん)と曰う.右脇下に在りて、覆いて大きさは杯の如く、久しく已えず.人をして洒淅(そんせき)として寒熱せしめ、喘咳し、肺癰を発す.
春の甲乙の日を以て之を得るなり.
何を以てか之を言えば、
心が病みて肺に伝え、肺は当に肝に伝うべきも、肝は春を以て適に王し、王する者は邪を受けず.肺は復た心に還さんと欲すれども、心は受けることが得んぜず.故に留結して積と為るなり.
故に息賁は春の甲乙(こういつ)の日を以て之を得ることを知るなり.

腎の積、名づけて賁豚(ほんとん)といい、少腹に発し、上は心下に至り、豚の状(さま)の若く、或は上り、或は下りて時無し、久しく已えず.人をして喘逆せしめ、骨は痿えて少気す.夏の丙丁の日を以て之を得るなり.
何を以てか之を言えば、
脾が病みて腎に伝え、腎は当に心に伝うべきも、心は夏を以て適に王し、王する者は邪を受けず.腎は復た脾に還さんと欲すれども、脾は受けること肯ぜず.故に留結して積と為るなり.
故に賁豚は夏の丙丁の日を以て之を得ることを知るなり.

此れ是が五積の要法なり.