難経

 

七十難


◆七十難曰.
經言.
春夏刺淺.秋冬刺深者.何謂也.
然.
春夏者.陽氣在上.人氣亦在上.故當淺取之.
秋冬者.陽氣在下.人氣亦在下.故當深取之.

春夏各致一陰.秋冬致一陽者.何謂也.
然.
春夏温.必致一陰者.初下鍼.沈之至腎肝之部.得氣引持之陰也.
秋冬寒.必致一陽者.初内鍼.淺而浮之.至心肺之部.得氣推内之陽也.
是謂春夏必致一陰.秋冬必致一陽.

七十難に曰く.
経に言う.
「春夏は刺すこと浅く、秋冬は刺すこと深し」とは何の謂いぞや?
然り.
春夏は、陽気は上に在り、人の気もまた上に在り、故に当に浅く之を取るべきなり.
秋冬は、陽気は下に在り、人の気もまた下に在り、故に当に深く之を取るべきなり.
春夏は各々一陰を致き(ひき いたし)、秋冬は一陽を致くとは、何の謂いぞや?
然り.
春夏は温かし、必ず一陰を致くとは、初めに鍼を下して、之を沈むるに、腎肝の部に至りて、気を得て之を陰に引き持ぐる(あぐる)ことなり.
秋冬は寒し、必ず一陽を致くとは、初めに鍼を内るる(いるる)に、浅くして之を浮かし、心肺の部に至りて、気を得て推して之を陰に内るることなり.
是を春夏は必ず一陰を致き、秋冬は必ず一陽を致く、と謂うなり.