難経

 

七十五難


◆七十五難曰.
經言.
東方實.西方虚.瀉南方.補北方.何謂也.
然.
金木水火土.當更相平.
東方木也.西方金也.
木欲實.金當平之.
火欲實.水當平之.
土欲實.木當平之.
金欲實.火當平之.
水欲實.土當平之.

東方肝也.則知肝實.
西方肺也.則知肺虚.

瀉南方火.補北方水.
南方火.火者木之子也.
北方水.水者木之母也.

水勝火.子能令母實.母能令子虚.
故瀉火補水.欲令金不得平木也.

經曰.
不能治其虚.何問其餘.
此之謂也.

七十五難に曰く.
経に言う.
東方実し、西方虚すれば、南方を瀉し、北方を補す」とは、何の謂いぞや?
然り.
金木水火土は、当に更(かわ)るがわる相い平らぐべし.
東方は木なり.西方は金なり.
木が実せんと欲せば、金は之を平らぐ.
火が実せんと欲せば、水が之を平らぐ.
土が実せんと欲せば、木が之を平らぐ.
金が実せんと欲せば、火が之を平らぐ.
水が実せんと欲せば、土が之を平らぐ.

東方は肝なれば、則ち肝が実せることを知る.
西方は肺なれば、則ち肺が虚せることを知る.

南方の火を瀉し、北方の水を補うは、
南方の火、火は木の子なり.
北方の水、水は木の母なり.

水は火に勝ち、子は能く母をして実せしめ、母は能く子をして虚せしむるなり.
故に火を瀉し水を補いて、金をして木を平らぐるを得ざらしむるなり.

経に曰う
「其の虚を治すること能わずして、何ぞ其の余を問わん」とは、
此れこの謂いなり.