難経

 

七十九難


◆七十九難曰.
經言.
迎而奪之.安得無虚.
隨而濟之.安得無實.
虚之與實.若得若失.
實之與虚.若有若無.何謂也.
然.
迎而奪之者.瀉其子也.
隨而濟之者.補其母也.

假令心病.
瀉手心主兪.是謂迎而奪之者也.
補手心主井.是謂隨而濟之者也.
所謂實之與虚者.牢濡之意也.
氣來實牢者爲得.濡虚者爲失.
故曰若得若失也.

七十九難に曰く.
経に言う.
「迎えて之を奪えば、安(いずく)んぞ虚なきを得んや.
随いて之を済(すく)すば、安んぞ実なきを得んや.
之を虚することと実することとは、得るがごとく失うがごとし.
実することと虚することとは、有るがごとく無きがごとし」とは、何の謂いぞや?
然り.
迎えて之を奪うとは、其の子を瀉することなり.
随いて之を済うとは、其の母を補うことなり.

仮令(たとえば)心が病みたるとき、
手の心主の兪を瀉するは、是を迎えて之を奪うと謂うなり.
手の心主の井を補するは、是を随いて之を済うと謂うなり.
所謂、之を実することと虚することとは、牢濡の意なり.
気が来たること実牢なる者は得たりと為し、濡虚なる者は失えりと為す.故に得るがごとく、失うがごとしと曰うなり.